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未来的愛玩具2:カテゴリー

未来的愛玩具2・(1)

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act 1


2001年に「A.I」というスピルバーグの映画が上映された。

A.Iとは「人口知能」の意味でロボットが果たして人間のように人を愛せるか、というのがテーマであった。2010年となった今では、つい数年前のこのテーマがすでに実現に近づきつつあった。

くみは30を半ばに過ぎかかろうとしていた。

ルックスは人並みなのだが、コテコテの大阪気質が昂じて婚期を逃していた。家族から離れ神戸に一人住まいをしたのも、いつでも男を自分の部屋に呼び込むためだった。しかしその策略も今だ実現されたことはない。

くみは日曜の午後、パジャマ姿で織り込みのチラシに目を通していた。会社の同僚からは映画の誘いを受けていたが、男友達に食事に誘われていると断わった。見栄をはったのだ。同僚からの誘いを毎回受けては、男日照りだと思われるのが嫌だった。退屈な休みとなるのは分かっていたのだが仕方ない。

フト目に入ったチラシがあった。

「恋人型A.I新発売」とあった。TVニュースでも最近の人工知能の発達ぶりは目覚しいと連日の報道でくみも耳にはしていた。誇大広告とは知りつつもチラシの文字を追った。

「あなただけを一生愛する男性型ロボット」
「浮気の心配いらず・一途2号」


などと女性の気を引くキャッチフレーズが並んでいる。

「叶うはずもない人間の男より、やっぱり現実的なロボットやろか」
くみは、思わず心のうちで呟いていた。

>>>全編

 


未来的愛玩具2・(2)

act 2

もうすぐ約束の時間だった。

くみがアレをインターネットを利用して購入の申し込みをしたのは丁度一週間前の日曜日だった。フト目に入ったチラシからはじまった。いつかも38万円もする美顔器を衝動で購入した。そういう性癖が前からあるのは自分でも知っていたが、今回はその美顔器の4倍もする買い物だった。

「それで世間体と、愛が手に入るのなら安いものだ」というのがくみが出した最終結論だった。ロボットは最上級のモノとはいかなかったがそこそこ良いものを時間を掛けて選択した。現代科学が生んだ「人口知能」というものに人生を掛けてみようじゃないか。くみは腹をくくってその到着を待った。

予定時間を5分過ぎて玄関のチャイムが鳴った。くみは少し緊張して、中腰のまま玄関ドアを眺めた。再びチャイムが鳴った。「ハ、ハイッ」いつものように宅急便でも取りに行く程度で良いのだ。くみは自分に言いきかせながら玄関に出た。ロックを解除してドアチェーンをはずした。

「こんにちわ」とくみよりも頭ひとつ分背の高い男性だった。くみは目を丸くした。その男性はにこやかにくみに微笑んでいる。「梅本くみさん、ですよね?」とその男が聞いた。「そ、そうです」くみは少し後ずさりしながら答えた。麻のサマージャケットに髪がやたらサラサラしているその男性は、くみに恐怖心を与えまいとその場で立っている。

「僕があなたが注文した製品です」と、笑顔を絶やさずその好青年はくみに言った。

未来的愛玩具2・(3)

act 3

くみは自分の足で歩いてきた製品とダイニングのテーブルで差し向かいに座っていた。分厚い取扱い説明書数冊、保証書などを検品している。くみは性格柄こういうのが苦手だった。電化製品の取扱い説明書などもすぐに無くしてしまう。まあそれが必要になったことは1度もないのだが。

「あなたのお名前はなんて言うの?」

くみの問いに、

「まだ未設定です」

とそっけない返事をされた。なるほどパソコンと同じで色々と初期設定がいるようだ。どこから見ても人間の男性にかし見えないのにくみはまだ驚いている。しかしはじめてなのにヤケに落ちつくこの男性型ロボットの雰囲気はなんなのだろう。それも考えられて造られているのか。まことロボット技術も発達したものだとくみはつくづく感心した。

「僕の鼻をつまんで、その説明書の通り設定を行ってください」と言われた。

説明書には「まずあなた好みの設定をしましょう!」とイラスト入りで書かれている。「名前を決めてください」とロボットくんが解説してくれる。これなら間違いそうもなくよかったとくみは内心安心した。「名前ねえ」とくみは考え込んでしまった。ロボットだから「ロボ」というのもそのまま過ぎる。逆さにして「ボロ」。

「ボロ・・・いいわねえ、それにするわ!」

くみはなんだか嬉しくなり叫んでしまった。「え?と、次ぎは方言ねえ。やっぱり大阪弁でしょ」とロボットの鼻を力を入れてつまんだ。

「へ?、わてがボロでおまッ!」

設定はいきなり標準語から完璧な大阪弁になった。

未来的愛玩具2・(4)

act 4

恋人型ロボットとの生活も数週間が過ぎた。

くみはこれまでにない快適な生活を楽しんでいる。一番嬉しかったのは会社から帰ってくると「おかえり」とボロが笑顔で迎えてくれることだ。長い独り生活者にとって、灯りのある部屋に帰れることはこの上なく嬉しい。

数年前に上映された「A.I」の中でのロボットは人間と同じ食事が出来なかった。食べれば機械なので壊れてしまうというシーンがあった。実用化された現代のロボットはその辺りも改良されている。人間と同じく食事がとれるようになったのだ。人によれば一緒に食事をしたいという希望があったのを可能としたのだ。しかし食べなければ起動しなくなるというものでもない。電池交換さえしていれば問題なく作動する。

くみも余裕がある時は、ボロと一緒に食事を楽しんだりする。しかし給料日前などは「今日は食事なしね」と言えばそれでよい。人間の男と違い不平は一切言わないのだ。話では聞いていたが実際使ってみると愛用者が増えてきている需要がわかる。今後はさらに増えてくることだろう。

プログラムにより炊事、洗濯、掃除とすべてをこなしてくれる。主婦用の家政婦型ロボットの機能も付随されているという優れものだ。大きな買い物だったけど、くみは今のところ大変満足している。もちろん夜のお供もしてくれる。夜用のプログラムも好きに設定出来る。

今晩のプログラムを説明書を見ながら鼻歌交じりで設定している時、部屋の電話が鳴った。くみが説明書の本を見ながら電話に出た。

「くみちゃん、久しぶり。オレ、大野恭介」
「えッ!」

くみは驚きのあまり、持っていた分厚い説明書をフローリングに思わず落としてしまった。


未来的愛玩具2・(5)

act 5

流行りのカフェは遅い時間にも関わらず、恋人風のカップルで賑わっている。

くみがいつも独りで酔った帰りに横目で見過ごしていた風景だった。「あんたらなによ?」といつもは思っていた風景だが、今日は違う。その中に自分がいる。悪い気分ではなかった。

「元気だった?」

恭介はセブンスターに火をつけながらくみに聞いた。

最後に会った時も彼の煙草はセブンスターだったわ。とくみは無意識に思いを巡らせていた。

「どうしたの?」

黒目がちな恭介が真っ直ぐにくみに聞いた。我に返ったくみは、

「ううん、なんでもない」

と彼の質問に関係ない返答をした。ちぐはぐな会話に少し間があいて、その後顔を見合わせてお互い笑った。親しい人同士が見せ合う笑い方だった。くみは時を隔てていたものが、その笑いで急に過去の距離に戻ったような気がした。

「突然こんなこと言うの変やけどサァ・・・」

恭介は煙草に目を落として唐突に切り出した。くみは彼の昔と変わらぬ喋り方を懐かしく思った。

「なによォ?」

とくみはいつもイザという時のために練習しているドラマ風を装った。ストローをくじくじさせ、身体をくねらせながら飲む仕草も付け加えながら。

「オレ、しょうもない女と関係し過ぎたわ。オレ、やっぱくみちゃんでないとアカンわッ」

突然の告白を受けたくみは中腰になって思わず口の中のジュースを正面の恭介に絵に描いたようにぶちまけてしまった。ずぶ濡れになりながらも恭介の黒目がちな瞳はくみを見据えていた。


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