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単身赴任

tanshin_funin.jpg単身赴任中知り合った二人の男。どちらも同じような仕事という理由で、親しくなった。一人の男が仕事が終わったことで、最後の夜をBARで過ごす二人。一人の男が趣味で書くSF小説の話が・・・

 Bar Cendrillon Series 

 

BGM
"After you've gone"
by Anri Ge La

 

《キャスト紹介》


戸  田・・・単身赴任中。
前  橋・・・同じく単身赴任中。
マスター・・・とても冷静でいて神秘的な女性。

 

(PLAY1)


                     S E ドアの開閉の音


マスター :いらっしゃいませ。
戸 田  :どうぞ、こちらです。やあマスター。
マスター :お久しぶりです。
前 橋  :感じのいいお店ですね、上品で。
マスター :ありがとうございます。
戸 田  :まあどうぞ。僕はブランディを。前橋さんは?
前 橋  :じゃ私も。
戸 田  :大丈夫ですか?
前 橋  :ええ、挑戦してみます。
戸 田  :(笑って)そうですか。じゃ2つお願いします。
マスター :かしこまりました。


          S E ドリンクを作る音


戸 田  :マスター、紹介しておきますよ。僕の隣人の前橋さん。
マスター :始めまして。
前 橋  :よろしくお願いします。
戸 田  :彼も僕と一緒で単身赴任の身なんですよ。
マスター :そうですか。今後ともよろしくお願いします。
前 橋  :はあ・・・
マスター :どうぞ・・・
戸 田  :ありがとう。前橋さんは真面目な人でこれまで酒も飲
      んだことがないってんだ。だからこうしてちょくちょ
      く僕が教えてあげてるんですよ。
前 橋  :感謝してます。
戸 田  :冗談ですよ。本当は一人で飲むのが寂しいもんで無理
      して付合ってもらってるんです。
マスター :仲がおよろしいのですね。
戸 田  :彼は迷惑がってんのじゃないかな?
前 橋  :とんでもない。
戸 田  :では優しい隣人に感謝して、乾杯。


          S E グラスの合わさる音


(PLAY2)


戸 田  :ダメダメ、ブランディという酒はそんなに一気に飲ん
      じゃもっと味わって飲なきゃ。
前 橋  :味わって?
戸 田  :そう、これは直接の食物じゃないんだ。なんて言うの
      かな楽しんだり、お喋りをしながら・・・
前 橋  :楽しんだり・・・
マスター :きっとお強いのでしょう。おかわりを?
前 橋  :どうも・・・
戸 田  :(取り繕うように)そうかもしれませんね。
マスター :(ドリンクを作りながら)ご一緒の会社ですか?
戸 田  :いえ、ただ偶然マンションの部屋が隣になったんです
      1階にある喫茶店で朝何回か朝食が一緒になって、
      知合ったんです。同じ境遇だからすぐ打ち解けて・・
前 橋  :知らない土地で始めての友人が前橋さんで本当に良か
      ったです。
マスター :どうぞ・・・実家はどちらです?
前 橋  :(困惑して)え、ええ・・・遠方です。
戸 田  :(助けるように)彼も東京ですよ。
      それで神戸の支社に。
マスター :そうですか。
戸 田  :仕事内容も訊けば僕と似てます。その土地の市場調査
      をして、その調査結果を定期的に本社に送る。だから
      色々な土地へ行くんです。僕はそんな仕事にはもう慣
      れましたが、前橋さんはまだ慣れていないらしく・・
前 橋  :失敗ばかりです。
戸 田  :心配いりませんよ。次第になれますから。
前 橋  :そうでしょうか?
マスター :ええ、もう慣れてらっしゃいますよ。
前 橋  :え?
マスター :ブランディーの飲み方が・・・


(PLAY3)


戸 田  :前橋さんは文才があり小説を書くんですよ。僕もこの
      間読ませてもらったけどあれはなかなか面白かった
前 橋  :いえあれは、僕のレポート・・・。
マスター :ジャンルは?
戸 田  :SFです。
マスター :SFですか?
戸 田  :宇宙人が地球人に化けて、地球の調査に単身赴任で来
      るんです。家族を自分の星に残して、自分の星の命令
      でイヤイヤね。
マスター :面白そうですね。
戸 田  :地球の習慣に慣れない宇宙人は最初人間にいじめられ
      るんですよ。
マスター :その宇宙人は何を調査に来たのですか?
戸 田  :地球を滅亡させるか、存続させるか。宇宙全体から見
      て平和な星か、有害となる星か。
マスター :彼の報告次第で地球は滅ぼされてしまうわけですね。
戸 田  :ええ、最初人間に迫害されておまけにホームシックに
      もなったわけだから早く役目を済ませて帰りたいわけ
      ですよ。だから自分の星へ滅亡させろと報告する。
マスター :それで?
戸 田  :でもイジケてる時一人の地球人と友達になるんです。
      単身赴任で働いている男と。話す内に全く自分と境遇
      が似てるわけですよ。地方から出てきてる理由で都会
      人からバカにされ、上司にいじめられてるんです。
マスター :それで二人は意気統合していく・・・
戸 田  :ええ、その地球人もうだつの上がらない真面目な宇宙
      人に親近感をもってくる。地球人は単身赴任の先輩ぶ
      って、真面目な宇宙人に人間の楽しみを色々教えてや
      るんです。
マスター :どんな?
戸 田  :女遊び、酒、ギャンブル、旅行、恋・・・始めは嫌が
      っていた宇宙人も次第に人間というものを理解してい
      くようになる・・・


(PLAY4)


マスター :それでその物語の最後はどうなるのですか?
戸 田  :その宇宙人は偶然に自分が地球人ではないことがバレ
      ちゃうんですよ。それでその宇宙人は本当の事を地球
      人の親友に打明けるんですよね。
マスター :地球人は驚きますね。
戸 田  :驚くだろうとその宇宙人も訊くんですよね、でもその
      地球人はこういうんです「おまえが地球人であろうと
      宇宙人であろうと俺達が友達でいることにかわりはな
      い」と。それで宇宙人も答えていうんです「僕達の友
      情に誓って地球は守ります」とね。
マスター :素敵なお話しですね。
前 橋  :(困惑して)ええ、どうも・・・
戸 田  :マスターは宇宙人はいると思いますか?
マスター :どうでしょう・・・
戸 田  :最近夜空を見上げたことは?
マスター :そういえばあまり・・・
戸 田  :もう都会では星はあまり見られませんものね・・・
マスター :そうですね。
戸 田  :でも山にでも行って夜空を見上げてごらんなさい。
      まだまだ見えますよ。
      こんなにもあったのかと思うほど。
マスター :そういえば幼い頃見た記憶を思い出しました。
      あまりの多さに見とれていたように思います。
戸 田  :そうですよ。
      そしてそれだけある星の中で人間だけが生きてるって
      ほうが不思議じゃありませんか?
マスター :そう言われればそうですよね。
戸 田  :そう考えるのは人間の驕りですよ。
マスター :はい・・・
戸 田  :ちなみに彼の小説に出てくる宇宙人は時々目が金色に
      光るんですよ・・・


(PLAY5)


戸 田  :僕は来月本社へ帰ります。
マスター :そうですか、
      ではこちらでの調査が終わったのですね。
戸 田  :一応。
前 橋  :せっかくお友達になってもらったのに残念です。
戸 田  :なーに、またすぐに誰かいい友達が出来ますよ。
      僕よりずっといいここでの友達が。
前 橋  :そうでしょうか?
戸 田  :きっとあなたならうまくやれますよ。
前 橋  :戸田さんには仕事上でも色々アドバイスを頂き、
      参考になりました。
戸 田  :大げさに言わないで下さいよ。
      でも一番大切なのは自分の目で見て、
      考えることですよ。
      それだけ我々がしている任務は大切な事ですから。
      たとえ会社が違っても・・・
前 橋  :ええ、判ってます。
      僕はこれからまだまだ勉強しなくてはならない事が
      山程あります。
戸 田  :彼は勉強熱心なんですよ。
前 橋  :あ、いけないもうこんな時間だ。
戸 田  :もう一杯だけどうです?
前 橋  :いえ、遠慮させて下さい。
      本社に報告を送る時間ですので。
戸 田  :そうですか。
      せっかくブランディの飲み方がうまくなってきたのに
      残念ですね。
前 橋  :じゃ、御馳走様でしたマスター。


           S E ドアの開閉の音


マスター :ありがとうござッ(驚き)・・・!
戸 田  :ん、どうかされましたかマスター?
マスター :・・・
戸 田  :まるでお化けでも見たようなお顔をされて。
マスター :今、彼が暗がりに出られるとき眼が、
      グリーンに・・・
戸 田  :緑色に光ったと・・・(笑い出す)
      お気のせいでしょう。
      さっき僕があんな話をしたからでしょうきっと、
      それに色は緑色ではなく金色ですから・・・


(PLAY6)


マスター :どうぞ。
戸 田  :おかわりは言ってませんが?
マスター :お仕事が一段落されましたので、
      これは当店から・・・
戸 田  :それは有難い、頂きます。ありがとう・・・
      マスター?
マスター :はい?
戸 田  :奢って貰ったから言うわけじゃありませんが・・・
      マスターや、マスターを慕って集まってくるここの
      お客さんみたいなお優しい人々ばかりだったら・・・
マスター :はい?
戸 田  :戦争や争い事なんか無くなるのに・・・
マスター :え?
戸 田  :私は個人個人には悪い人間はいないと信じてます。
      それが組織とか国家という集団になると、
      おかしくなる。悲しい事だが・・・
マスター :(戸惑う)ええ・・・
戸 田  :すみません変な事を言って。
      僕もさっきの話に影響されたのかな(笑う)
マスター :私もさっきのお話しに影響されたとして、
      一つだけお伺いしてもよろしいでしょうか?
戸 田  :なんでしょうか?
マスター :報告書にはなんと?
戸 田  :(ちょっと間を取って笑い出す)マスターは大変
      ユーモアのある方だ。
マスター :私は友情と信頼を信じたく思います。人間同士、
      そしてたとえそれが異性人であっても・・・
戸 田  :成程・・・私もそう願います。
      報告書には・・・決断の時期尚早、
      今だ成長課程にあり、今後の存続に期待・・・
マスター :猶予期間?
戸 田  :まあ、そんなところなんじゃありませんか、
      あの物語の宇宙人の報告内容は。
      もっとも僕の想像ですけど・・・
マスター :ありがとうございます。
戸 田  :僕もマスターへ、最後に一つだけお願いがあります。
マスター :なんでしょう?
戸 田  :それは(ちょっと躊躇)・・・
      僕があのドアから出るときもし眼が金色に光っても、
      驚かないで下さいね。

 

おわり

 

単身赴任
Story by ushi

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タグ : 牛のドラマシアター ドラマ シナリオ ラジオドラマ バールサンドリオン SF

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