牛のドラマシアター

牛のドラマシアター >> 霧が晴れるまで

霧が晴れるまで

one_shot_12.jpg霧・・・森が霧に包まれる時、あの人が来てくれる。
ニッコリと微笑みながら、ゆっくり歩いて来る・・・
時にはジャケットのポケットに小さな花束を入れて・・・(劇中セリフより)。 幻想的なラブストーリーです。

 Drama 8     >>> ラジオドラマとして聞く

 

 

《キャスト紹介》

男・須藤 篤志・・・
ピアニストを目指してる。心優しきロマンチスト。

女・相原 香織・・・
篤志の恋人だった。桜井幸子タイプ。

 

 

女N :霧・・・森が霧に包まれる時、あの人が来てくれる。
        ニッコリと微笑みながら、ゆっくり歩いて来る・・・
    時にはジャケットのポケットに小さな花束を入れて、
    ちょっと照れながら渡してくれたりする。
    「ごめんね、あまり来れなくて」ちょっとシャイに言訳をする彼。
    そんな優しい彼が好き・・・でも、
    彼の優しさに甘えるのも今日が最後にしよう・・・
    悲しいけれど、最後にしよう・・・
 
S E 草を踏み分け歩いてくる足音

男  :香織・・・
女  :篤志さん・・・
男  :久しぶり。
女  :やっぱり来てくれたのね。嬉しいわ。
男  :今日はいい知らせがあるんだ。
女  :なにかしら?
男  :ジャーン!
女  :トロフィー?
男  :ああ、3位入賞。
女  :すごいわ!おめでとう。
男  :でも全国大会に出場出来るのは上位2名なんだ。
    全国大会にはいけなかった。
女  :3位でも立派なものよ。
男  :香織なら十分全国大会、いや世界にまで行けたのに・・・
女  :そんなことないわ。
男  :香織のためにもっとがんばりたかったけど・・・
女  :十分だわ、篤志さん。心のこもった演奏曲をありがとう。
男  :え?
女  :ラフマニノフの「ピアノコンチェルト協奏曲第二番」・・・
    私の一番好きだった曲を弾いてくれて・・・
男  :どうしてそれを知ってるの?
女  :演奏前に祈るように言ってくれたでしょう
    「香織聞いていてくれよ」って・・・
男  :来てたの、会場に?
女  :第一楽章モデラートは華麗に優雅に。
    第二楽章アダージョ、ここはすごくロマンチックに。
    第三楽章アレグロは軽やかにテンポよく・・・すごくよかったわ。
男  :ほんと?
女  :ええ、感激のあまり涙が出ちゃったもん。
    篤志さん、本当にありがとう・・・
男  :そうか、よかった。
女  :すこし歩きましょうか?
男  :うん。

S E 小鳥のさえずりなど

男  :小学校の頃、帰り道にいつも奇麗なピアノの曲が
    聞こえてくる家があった。
    俺はよく立ち止まってその曲を聞いていたんだ。
女  :うん。
男  :6年生の時、コーラス大会で香織がピアノ伴奏することになった。
    そのピアノを聞いた時すぐに分かったんだ。
    あ、この子だったんだって。
女  :篤志さん、ずっと私の横で見てたわね。
    黙って、ずっといつまでもいつまでも。
男  :不思議だったんだよ。
    どうして両方の手であんな器用に鍵盤を叩けるんだろうって。
    それであんまり見てるもんだから、香織言ってくれたよな。
    弾いてみるって。
女  :ええ・・・
男  :音楽の素晴らしさを教えてくれてありがとう、香織。
女  :教えたなんて・・・
男  :香織ならきっと世界に通用するピアニストになれたろうに。
女  :その分篤志さんががんばって、ね。
男  :俺は香織ほど才能がないよ。
女  :そんなことないわ。篤志さんだったら大丈夫よ。
男  :香織・・・
女  :真理ちゃんとは仲良くやってる?
男  :ああ・・・
女  :彼女、いい子よ。
男  :うん。
女  :そろそろちゃんと付合ってあげて。
男  :え?
女  :彼女、篤志さんの事を本当に思ってるのよ。
男  :・・・
女  :篤志さんも分かってるでしょ。
男  :彼女は、香織の親友だったんだゼ。
女  :だから安心できるの。
男  :俺は・・・
女  :もういいの・・・
男  :え?
女  :もう十分よ。もう私に気を使わなくっても大丈夫。
    もう篤志さんに甘えたりしないから・・・
男  :香織・・・
女  :だから、もう会いに来てくれなくても平気よ。
    その分、真理ちゃんを大切にしてあげて。
男  :俺は香織を・・・
女  :篤志さんのことは忘れない。
    篤志さんにしてもらった優しさも
    思い出として心の中に大切にしまっておきます。
    篤志さんもそうして。でも、過ぎ去った悲しみは忘れましょう。
男  :・・・
女  :悲しみは忘れないと、前に進めないわ。
    ね、そうでしょう?
男  :ああ・・・
女  :今度は私が篤志さんを見守るわ、いつでもいつまでも・・・
男  :うん。
女  :篤志さん。
男  :なんだい?
女  :思い出をありがとう。
    楽しかったいっぱいの思い出をありがとう。
男  :俺のほうこそ、ありがとう。
女  :真理ちゃんを愛してあげてね。
男  :うん、わかった。
女  :風が出てきたから霧が晴れていく。じゃ、もう行くね。
男  :香織・・・さようなら。
女  :さようなら、篤志さん。
男N :風が出てきたとたん、霧と共に香織が去って行ったような気がした。
    ここへ来ると不思議に香織と会話をしたような気になる。
    俺に音楽を教えてくれた香織。
    俺が人生で最初に愛した女の子。
    優しかった香織・・・
    天才ピアニストと騒がれながら、あまりに早くに逝ってしまった・・・


    相原香織、享年19才。

 

 おわり

 

霧が晴れるまで
Story by ushi 

 

 ↓"作品が面白かった"という人はクリック下さい。ランキングに参加しています(^^)

にほんブログ村 小説ブログ 脚本・シナリオへ

タグ : 牛のドラマシアター ドラマ シナリオ 恋愛 ラジオドラマ

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 霧が晴れるまで

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://ushibook.com/mt/mt-tb.cgi/12

コメントをどうぞ






TOPPAGEサイトの最初のページへ  TOPページの先頭へ 
  • お問合わせ
  • 作品提供
  • リンク集
  • サイトマップ
  • 初めての方へ

牛のドラマシアター

検索


インデックス

  • One Shot Story
  • ハンターバニッシュ
  • スマートな泣き方
  • 来なかった待ち人
  • ファールボールの幸運
  • 残り香の記憶(前編)
  • 残り香の記憶(後編)
  • 訪ねてきた女
  • グラデュエーション(卒業) 
  • Ten Years After
  • ワインレッドのウインク
  • 自選式幸福
  • 霧が晴れるまで
  • 慣れない部屋
  • 格子のある部屋
  • 父の日記
  • ナナ
  • シンデレラロード・第1話
  • シンデレラロード・第2話
  • シンデレラロード・第3話
  • 単身赴任
  • One Scene
  • BAR MOON STONE
  • Put back over spilt milk
  • 8秒間の抱擁
  • IMAGINARY LOVE
  • Weekend Hotel
  • まるで映画のシーンのような
  • あの日、桜の下で
  • 未来的愛玩具
  • 遅すぎたスナイパー
  • Young Theater
  • 十一年目の出会い
  • もう友達じゃない
  • 朝風呂のようなあなた
  • ラブ・マジック
  • 死んでもアイラブユー
  • 未来的愛玩具2
  • 作品メイキング
  • 牛のエセ日記
  • サイト更新案内
  • 雑記
  • Bookレビュー
ブログランキング・にほんブログ村へ
バナー
バナー
バナー

RSS2.0
Copyright© 2008 牛のドラマシアター Allrights reserved.
Powered by MT4.23-ja