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来なかった待ち人

one_shot_4.jpgホラー番組を書くことになったライターが幽霊を頻繁に見るという少女にインタビューをする。その少女が見る幽霊とは1年前に自分が海で殺した親友なのだと語る。そしてその霊は1年後に彼女を...

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(PLAY1)


マスター :おかわりをお作りしましょうか?
男性客    :そうだな、お願いします。
マスター :同じものでよろしいでしょうか?
男性客    :なにか、さっぱりする・・・そうだ、トム・コリンズを。
マスター :かしこまりました。


          S E ドリンクを作る音。


マスター :お待たせしました。
男性客  :ありがとう。
マスター  :お仕事が終り、ホッと一息ですか?
男性客    :いえ、これからで頭を抱えています。
マスター :新しい作品の構想中ですか?
男性客  :ええ、今度夏の特番でホラー特集をやるんです。その台本
            を書かなければいけないんですけどね。
マスター  :恐怖物?
男性客  :そうなんですよ。でも僕は恐怖体験とか霊体験ってやつが
            1つもないんですよ。マスターはお化けご覧になったこと
            ってあります?
マスター  :残念ながらありません。
男性客  :そうですか。一度でも見たらイメージが湧くのに、出てき
            て貰いたい人には姿を見せてくれないもんなんですねかね?
マスター  :さあ、どうでしょう。
男性客  :困った挙げ句友人に電話しまくって、やっと幽霊をよく見
            るという少女を紹介して貰えたのですよ。
マスター  :では、これから取材ですか?
男性客  :ええ、マスターもよければ一つお話を聞いておけばいかが
            です?暑さしのぎに・・・
マスター :わたくしは・・・
男性客  :あ、ひょっとしてマスターは、苦手なんじゃないありませ
            んか・・・(相手を怖がらせる声で)ユ?レイが!


(PLAY2)


          S E ドアの開閉の音。


マスター  :いらしゃいませ。
男性客  :あのー、松本さんでいらっしゃいますか?
女性客    :はい・・・
男性客    :遅い時間にわざわざすみません。まあ、こちらへどうぞ。
女性客    :どうも・・・
男性客    :私、古永と申します。
女性客    :松本、久美です。
男性客    :なにかお飲物をどうぞ。
女性客    :わたし、アルコールは・・・
男性客    :じゃオレンジジュースでも?
女性客    :はい。
マスター  :かしこまりました。


          S E ドリンクを作る音。


マスター :お待たせしました。
男性客  :似合いますよ、そのブルーのワンピーズ。
女性客    :どうも・・・
男性客    :(マスターに)いや、初対面だから目印にブルーのワンピー
            スを着て来て貰ったのです。
マスター  :夏らしくとてもかわいいですよ。特に胸のリボンが。
女性客    :どうも・・・
男性客    :こんなかわいい子だったんなら、取材なんかやめちゃいた
            くなるなあ。ねえ、マスター。
マスター  :しっかりお仕事して下さい。
男性客    :あ、さっきの仕返しですね。まいったなー。と、空気も
            和んだところで、早速ですけどお話し伺わせて貰えますか?
女性客    :はい・・・
男性客    :どんな体験でしょうか?
女性客    :ええ・・・
男性客    :結構ですよ。僕は商売柄多少どんな話しを聞いても平気です。
            それとプライベートは絶対厳守しますから安心して、気楽に
            喋って下さい。
女性客    :・・・
男性客    :大丈夫ですって、何を聞いても驚いたりしませんから、ね。
女性客    :・・・わたし、人を・・・殺したんです。
男性客    :(驚いて)ええッ!!!!!!


(PLAY3)


男性客  :ど、どうも失礼。今、なんて言われました?
女性客    :人を、殺したと・・・
男性客    :(落ち着こうと咳払い)よければ、最初から話してもらえま
            せんか?
女性客    :わたしには幼い頃からの親友がいました。彼女の名前は鈴木
            恵子。私達はとても仲良しで、顔の作りまで似ていたもので
            すからよく近所の人に姉妹みたいだと言われてました。
            小学校から高校まで同じ制服を着て、一緒に登校もしていま
            した。
男性客    :なるほど。
女性客    :恵子は頭も良く素直でした。だから友達もたくさんいました。
男性客    :久美さんは?
女性客    :わたしは極度に人見知りするんです。だから友達も恵子に
            紹介してもうことが多かったんです。
男性客    :性格が対照的だったんですね。
女性客    :ええ・・・
男性客    :それで?
女性客    :高校2年の時、恵子にバスケットボール部のマネージャーに
            ならないかと誘われました。当時男子バスケット部にはマネ
            ージャーがいなかったんです。それと・・・
男性客    :それと?
女性客    :恵子はバスケット部に好きな男の子がいました。大槻君と言
            います。
男性客    :そのことを恵子さんは久美さんに話してくれたんですか?
女性客    :いいえ、でもすぐにわかりました。なんとなく・・・
男性客    :どうして話してくれなかったんでしょう?
女性客    :それは・・・たぶん恵子も気づいていたからかもしれません。
男性客    :あなたもその男の子が好きだったと。
女性客    :はい・・・
男性客    :それで?
女性客    :それで・・・あの、夏が来たんです・・・


(PLAY4)


男性客  :夏?
女性客    :ちょうど1年前の今日が・・・
男性客    :1年前の今日?
女性客    :バスケットの部員で海に行くことになり、私と恵子も誘わ
            れました。最初恵子は嫌がりました。
男性客    :恥ずかしかったのかな?
女性客    :恵子は、泳げなかったのです。
男性客    :カンヅチだった?
女性客    :ふだん消極的なわたしがその時、はじめて恵子を強引に誘
            ったのです・・・何かに心を突き動かされるように・・・
男性客    :うん・・・
女性客    :人気のある海岸は人が多いので、明石の向こうの江井ヶ島
            という所へみんなで行きました。男の子達は元気に海へ出
            ていましたが、泳げない恵子はずっと浜辺にいました。
            恵子はその間、ずっと大槻くんを目で追ってました。たぶ
            ん恵子は大槻くんに声を掛けて貰うのを待っていたんだと
            思います。その数週間前から恵子と大槻くんはクラブの練
            習が終ると一緒に下校してましたから・・・
男性客    :二人は付合いはじめていた?
女性客    :わたしは、苦しかったんです・・・恵子と大槻くんが一緒
            にいるところを見るのが・・・とても・・・
男性客    :分かるよ君の気持ち。
女性客    :大槻くんが声を掛ける前に、わたし恵子を海に誘ったんです。
            恵子はもちろん嫌がりましたが、腕を取り強引にゴムボート
            に乗せて沖に出ました。テトラポットの外まで出た時・・・
            わたし・・・
男性客    :どうしたのです?
女性客    :恵子の、背中を押しました・・・
男性客    :!
女性客    :恵子は・・・恵子は必死になって、わたしに手を差し出しま
            した・・・
男性客    :・・・
女性客    :でも、わたし、ただ見ていたんです・・・ものすごく冷静に。


(PLAY5)


女性客    :恵子の死は事故死扱いされました。
男性客    :・・・
女性客    :わたしは、自分がしたことを理解するのに長い時間がかか
            りました。
男性客    :うーん。
女性客    :お話したいのはここからです。不思議なことが起き出した
            んです。
男性客    :不思議なこと?
女性客    :わたしの家の廊下や、部屋の一部が水でずぶ濡れになって
            いることが度々起こりました。家族の者は不思議がりまし
            た。でも、わたしはすぐにわかりました。
男性客    :?
女性客    :恵子が来たんだと。

男性客    :死んだはずの恵子さんが。
女性客    :一番最初は、浴槽の中に現われました。水脹れになった醜
            い顔で、湯船の中からわたしを睨んでいたのです。

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男性客    :まさか・・・
女性客    :その後も頻繁に恵子は現われて、わたしにこう言いつづけ
            ました・・・
            「来年のあの日に、必ず迎えに来るからね」と・・・
男性客    :来年のあの日ですか。
女性客    :ええ、恵子が死んだ日・・・
男性客    :まさか・・・
女性客    :今お話したことはすべて本当です。
男性客    :うーん。
女性客    :お疑いでしたら、どうか警察でお確かめ下さい。
男性客    :いえ、信じないという訳ではありません。とても迫力ある
            お話でした。でも、ちょっと待って下さい。もし、今のお
            話しが本当なら、今日は恵子さんの命日。恵子さんがあな
            たを迎えに来ると言った日じゃありませんか。
女性客    :ええ、そうです。


(PLAY6)


男性客    :安心して下さい。もう12時はまわっています。恵子さんの
            幽霊が言ってた日はもう過ぎました。きっと、久美さんの罪
            の意識が生み出した幻覚だったのです。
女性客    :(急に我に返ったように)12時を過ぎている。
男性客    :どうかされましたか・・・
女性客    :帰ります・・・
男性客    :あ、ちょっと待って下さい。送りますから。
女性客    :結構です。友達がすぐそこまで迎えに来てくれてますから。
            失礼します。


          S E ドアの開閉の音。


男性客    :(ふーと一息)マスター、今の話しどう思われます。
マスター  :不思議なお話ですね。
男性客    :僕は彼女は親友の事故死で、ノイローゼになっているんだと
            思いましたね。いくら同じ男の子を好きになったからと言っ
            て殺せますか、あんなにまだ幼い子が?
マスター  :そうですね。


          S E 電話のベルの音


マスター  :もしもし・・・サンドリオンでございます・・・はい・・・
            ちょっとお待ち下さい。お客様・・・お客様にお電話です。
男性客    :僕に?誰かの間違いでしょう。だって今日僕がここに来てい
            るのは誰も知りませんよ。
マスター  :警察の方からだと。
男性客    :もしもし・・・はい、古永は私ですが・・・そうです、確か
            に古永浩章は自分です・・・え、はあ・・・え!!!!!!
            まさか、本当ですか・・・で、いつのことです・・・・しか
            し信じられません・・・・分かりました、すぐにお伺いしま
            す・・・(受話器を切る)
マスター  :どうされましたか?
男性客    :信じられないことですが・・・松本久美は死んだそうです。
マスター  :さっきの女性が!
男性客    :もし、ついさっきここから出ていった子が確かに松本久美と
            いう女性ならですが。
マスター  :どういうことなのでしょう?
男性客    :松本久美は、10時12分にトラックにはねられて即死した
            ようです。彼女の所持品に僕と会う約束の日と時間と、ここ
            の電話番号があったそうです。
マスター  :彼女がここへ来たのはたしか10時半くらいでした。
男性客    :警察が言うには・・・ブルーのワンピースを着ていたそうです。
マスター  :まさか・・・
男性客    :そうですね・・・警察へ確認に行ってきます。もしも・・・
            もしも警察が言う通り、死んだ子が僕たちが会っていた松本
            久美だったら・・・まさかね、マスター・・・
マスター  :でも・・・
男性客    :どうしました?
マスター  :でも、彼女確かここを出る時に言ってましたね・・・
男性客    :な、なんて?
マスター  :お友達がすぐそこまで迎えに来ていると・・・

 

おわり

来なかった待ち人
Story by ushi

 

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