シンデレラロード・第2話
婚約相手は神戸でも有数の実業家の御曹司。幼い頃から母と苦労だけで生きてきた香住華子にとって、それはまるで絵に描いたようなシンデレラストーリーだった。しかし婚約者との婚前旅行の夜、華子の運命を左右するシンデレラロードが用意されていた・・・(全3話)
Bar Cendrillon Series
《キャスト紹介》
刑事 ・谷水康雄(35才)・・・生田署・捜査1課の刑事。
ヒョウヒョウとした性格。
男性客・伊藤寿浩(27才)・・・伊藤商事の御曹子。香住華子の
婚約者。
マスター ・・・
(PLAY1)
S E ドアの開閉の音
マスター :いらっしゃいませ。
刑 事 :こんばんわ。
マスター :どうぞ、こちらへ。
刑 事 :ああ、どうも・・・
マスター :お飲み物、何にいたしましょうか?
刑 事 :ああそうですね・・・じゃ水割りを下さい。
マスター :かしこまりました。
S E ドリンクを作る音
刑 事 :いいお店ですね、シャレてて。
マスター :ありがとうございます。
刑 事 :こういう所に来るお客さんは、やっぱり若い人達が多いん
でしょうなあ。
マスター :そうですね。
刑 事 :私なんか場違いですな。
マスター :いえ、そんなことございません・・・お待たせしました。
刑 事 :ありがとう。置いてる物もシャレてて、あの時計なんかな
んて言いましたっけ・・・
マスター :アンティーク・・・
刑 事 :そうそうアンチークで・・・あれ、もう12時ですか?
マスター :いえ、あの時計は12時を指したままなんです。
刑 事 :あ、成程。飾り物・・・
マスター :店の名前がサンドリオンと申しますので・・・
刑 事 :サンドリオン?
マスター :英語でシンデレラという意味です。
刑 事 :ああそうか、全く無知なもんで、お恥ずかしい。シンデレ
ラ、だから12時で止まった時計ですか。ありがとうござい
ます、1つ勉強になりました。
(PLAY2)
刑 事 :不躾けなことをお聞きしますが、香住華子という女性をご
存知ですか?
マスター :ええ・・・
刑 事 :ここへはよく来られてました?
マスター :(躊躇)それは・・・
刑 事 :名乗るのが遅れてすみません。私、生田署の捜査1課の谷
水と申します。
マスター :刑事さん?!
刑 事 :いえ、先週の金曜日にちょっと事件がありまして・・・コ
ロシなんです。
マスター :殺人事件!
刑 事 :殺されたのは山東会という組に所属している真鍋智彦。
若いチンピラです。
マスター :はい・・・
刑 事 :まあ恨まれ事が多い奴でして、容疑者は何人か出てきてる
んですけど・・・
マスター :華子さんとも何か関係があるのですか?
刑 事 :ええ、捜査上ちょっと香住さんの名前が・・・
マスター :まさか・・・
刑 事 :チンピラ風の男と彼女が以前ここへ来たことは?
マスター :いいえ1度も。
刑 事 :そんな話を彼女がしたことは?
マスター :いいえ・・・
刑 事 :そうですか・・・
マスター :まさか、華子さんが容疑者の1人に・・・
刑 事 :それはまだなんとも・・・それに華子さんには事件当夜に
はアリバイがちゃんとありますし・・・
マスター :いつの事と申されました?
刑 事 :先週の金曜日の深夜です。
マスター :先週の金曜日でしたら、確か華子さんは婚約者の伊藤様と
ご一緒にここへ寄られましたけど・・・
刑 事 :ええ、伊藤さんもそう証言なさってます。
(PLAY3)
S E ドアの開閉の音
マスター :いらっしゃいませ。
男性客 :(勢い込んで)刑事さん、まだこれ以上聞き足りないこと
があるんですか!
刑 事 :これは伊藤さん、お疲れのところ申し訳ありません。
男性客 :全くあなたの捜査は検討はずれだと思いますよ。
刑 事 :とにかく、まあこちらへ。
男性客 :マスター、聞いて下さいよ。この刑事ったら全く何を考え
てるのやら。まるで華子を犯人のように聞いてきて・・・
刑 事 :いいえ、そんな、ただ形式的なものでして・・・まあ、お
飲み物でも召し上がって下さい。
男性客 :ビールを・・・
マスター :かしこまりました。
S E ドリンクを作る音
男性客 :どんな形式的なものかしれませんが、一つ間違えばあなた
の刑事としてのクビが飛びますよ。神戸の伊藤商事といえ
ばご存知のはず。
刑 事 :そりゃもう・・・
男性客 :華子はその伊藤商事を継ぐ僕の婚約者だ。
刑 事 :ええ・・・
男性客 :それを肝に命じて言葉してください。判りましたね。
刑 事 :はい、よーく命じておきます。
マスター :お待たせしました。
男性客 :それでこれ以上何を?
刑 事 :もう1度話を整理させて下さい。マスターも出来ればご一
緒にお願いします。
男性客 :また同じことをいわせる気か?
刑 事 :すみません、私頭の回転が遅いものですから・・・
(PLAY4)
刑 事 :先週の金曜日8時30分頃あなたと華子さんはこのお店に立
寄ってます。
マスター :はい、確かに・・・
刑 事 :そして10時過ぎに店を出ました。間違いありませんか?
マスター :ええ・・・
刑 事 :その時間をなぜマスターは覚えていましたか?
マスター :確か、華子さんが時間を気にして、私がお教えしたと思い
ます。
刑 事 :その後あなたと華子さんは六甲山のあなたの別荘へ行きま
した。
男性客 :ええ、ご覧になったでしょう。どうしてもこの人が見たい
というもんだから昨日この人と行ったんですよ。
刑 事 :それは素晴らしい別荘でした。我々貧乏人には手の届かな
い見事なものでしたよ。
男性客 :そんなことはいいから・・・
刑 事 :あ、すみません。あの日も私と行った同じルートで?
男性客 :ええ、そうですよ。
刑 事 :片道だとここから54分掛かります。その日はあなたの運転
ではなく、華子さんの運転で行った。
男性客 :ああ、ちょっとここで飲み過ぎちゃって・・・僕はあまり
強い方じゃないもので・・・
刑 事 :じゃ華子さんはお飲みではなかった?
男性客 :飲酒の疑いで逮捕する気ですか?!
刑 事 :いいえ、とんでもない。
男性客 :華子が別荘まで運転していきました。でもあそこまでは1
本道です。他を通るとは思えません。
刑 事 :思えない?
男性客 :あ、実は別荘に着くまで僕は眠ってました。最後に頂いた
カクテルが効いたみたいです。
刑 事 :カクテル?
マスター :シンデレラ・ロードです。
(PLAY5)
刑 事 :これがシンデレラ・ロードですか。いやあ奇麗な色合いで
すね。(飲む)美味しいです。
マスター :ありがとうございます。
刑 事 :これを飲んだら酔いが急に回って来たのですね?
男性客 :フラついてグラスを壊しちゃましたよね。
マスター :いいえ、あれは華子さんの肘が当たったのです。
男性客 :そうですか、てっきり僕が倒したのかと思った。
刑 事 :じゃあなたはその後眠っていたわけですか?
男性客 :ええ、でも眠っていたといっても、別荘に着くとすぐ華子
に起こされましたよ。
刑 事 :それからはずっと華子さんとご一緒だった。
男性客 :ええ、日曜日帰ってくるまで片時も離れずにね。
刑 事 :その日、正確には翌日土曜日の午前零時から午前2時もご
一緒だった?
男性客 :犯行時刻ですか?でも残念ながらその時もね。そうだ、1
時近くにここへ電話を入れたはずだ。ね、マスター。
マスター :はい、確かに丁度午前1時でした。
刑 事 :ご用件は?
マスター :華子さんが時計をお忘れになっていて、それをお確かめに。
男性客 :彼女は金属アレルギーで、時計をすぐはずす癖があるもん
ですから。
刑 事 :なるほど・・・時計で思い出しましたけど、あなた別荘で
古い、ほらここにもあるようなあんなアンチークな時計の
時間を昨日合わせていましたよね。
男性客 :あれは時間を合わせていたんじゃないですよ。あの時計は
古いものでもう動きませんから。
刑 事 :動かないのになぜ?
男性客 :祖父が常に3時に合わせていたのです。3という数字は祖
父の一番好きな数字だったのです。だから大切な行事はす
べて3がつく日を選んでました。ちなみに僕達の結婚式も
3月の23日です。掃除の人か管理人が間違えて触ったので
しょう。
刑 事 :ラッキーナンバーですか・・・
(PLAY6)
刑 事 :他に別荘内で何か変わったような感じはありませんでした
か、例えば置いてる物の位置だとか・・・
男性客 :いいえ何も。あの夜は雰囲気も最高でしたよ。昔歌であっ
たじゃありませんか、夜霧よ今夜もありがとうって。
刑 事 :霧ですか・・・
男性客 :ええ、着いてすぐにまるであそこだけが別世界のように、
幻想的で世俗から僕達を自然が離してくれたんだって華子
と話しました。
刑 事 :別世界ですか、うーん(考え込む)
男性客 :他にお聞きしたいことは?
刑 事 :いいえ。
男性客 :そうでしょう。聞けば聞くほで華子の身の潔白は確かにな
るでしょう。これで僕は失礼しますよ。いいですか、僕は
すぐにあなたがお困りになる手を打つつもりですからね。
脅しじゃありません。それじゃマスター。
マスター :ありがとうございました。
S E ドアの開閉の音
刑 事 :(唸る)うーん・・・
マスター :彼は華子さんを庇って嘘を言ってるようには見えませんが。
刑 事 :ええ、彼は嘘をついてません。
マスター :それじゃ・・・
刑 事 :彼の証言は事実でしょう、おそらく・・・
マスター :彼はあなたを告訴なさりますよ。
刑 事 :そうみたいですな・・・
マスター :でも刑事さんはあくまで華子さんを・・・
刑 事 :いやあマスターもお優しいお顔をしてるのに、なかなか鋭
いですなあ・・・
マスター :ではやっぱり・・・
刑 事 :失業しても私みたいなのは無理ですな。バーテンダーには
ハハハ・・・おっと何時かな、そうかあの時計は止まって
るんでしたね・・・ん?
マスター :どうかされましたか?
刑 事 :今日は時計が、よく話に出てきますね・・・シンデレラ・
ロード、か・・・
つづく
シンデレラロード第2話
Story by ushi
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