訪ねてきた女
女性雑誌のアンケート取材に応じた男。訪ねて来た編集者はとびきりの美人。取材内容は「女性の整形」。男の過去が次第に紐解かれていくと・・・
Bar Cendrillon Series >>> ラジオドラマとして聞く
(PLAY1)
S E ドアの開閉の音
男性客 :どうぞ、入ってください。
マスター :いらっしゃいませ。
女性客 :ほんと、いいお店ですね。
男性客 :マスター、こちら女性ライターの本間百合さん。
マスター :始めまして。
男性客 :まずは飲み物を頼みましょう。何になさります?
女性客 :モスコー・ミュール、お願いします。
男性客 :俺はマンハッタンください。
マスター :かしこまりました。
S E ドリンクを作る音
男性客 :(嬉しそうに)マスター、今日さ俺取材されちゃって。生
まれて始めて、1度されたかったんだ。
マスター :何を取材されましたか?
男性客 :まあ一般的な男の恋愛感から、交遊関係、遊び、趣味とか
ほら、よく女性雑誌にあるでしょ、男はこう思ってますよ
っていうアレ。
マスター :お待たせしました。
女性客 :ありがとう。
男性客 :でも、俺みたいに取材される男ってどうやって選ぶの?
女性客 :それはまた別の人が選ぶのでよく知りませんけど、たぶん
ランダムに選ぶのだと思います。
男性客 :そうか、じゃ俺はラッキーだ。
女性客 :取材させてもらってそんなに喜んでいただくなんて・・・
男性客 :取材もそうだけど、本間さんみたいな美人に知り会えて。
女性客 :あら、そんな・・・
男性客 :ご結婚は?
女性客 :まだです。
男性客 :いよいよラッキーだ。
(PLAY2)
女性客 :さっき学校名もお聞きしましたけど。
男性客 :ええ。
女性客 :北須磨高校だと、夏田圭子さんはご存知ないですか?
男性客 :ああ、彼女なら小学校から一緒でした。本間さんもご存知
なんですか?
女性客 :大学の時一緒だったんです。
男性客 :そうですか。彼女今何してるんですか?
女性客 :卒業後、私も会ってないんです。
男性客 :そうなんですか?
女性客 :小さい頃の彼女ってどんな子でしたか?
男性客 :そうだな、小さい頃はナッちゃんで通っててよく遊んだり
したなあ。作文がすごく上手かった。俺なんか何書いたら
いいのか首かしげてる横で、スラスラ書いてた。
女性客 :そう。
男性客 :でも彼女よくいじめられてた。ほら、小さい頃って、人の
欠点をあからさまに言うじゃない。
女性客 :そうね。
男性客 :彼女、なんて言うかお世辞にもかわいくなかったんだ、顔
が。 それと・・・
女性客 :それと?
男性客 :うん・・・顔にアザがあったんだ。知ってるだろ。
女性客 :ええ・・・
男性客 :だから、男の子達にオバケってからかわれて、よく泣かさ
れてた。今から思えば、子供の頃って残酷だよな。
女性客 :イジメを助けてあげなかったのですか?
男性客 :可哀相に思ったけど、そんな事したら変に思われるかもし
れないし、逆に俺がイジメられるかもしれないと・・・
弱虫だったんだ。学年が上がるにつれて、そんな酷いこと
はなくなったけど、顔のアザの事をやっぱり気にしてたん
だと思う。みんなから離れて、孤立することが多かった。
いわゆるクライ感じになってしまった。
(PLAY3)
女性客 :やっぱり男性って女性はきれいな方が好きですよね。
男性客 :そりゃ・・・そうかなやっぱり。
女性客 :私実は今、整形美容をした人についての本書いてるんです。
男性客 :へえ。
女性客 :資料もってるんで、ご意見聞かせてください。
S E バッグから資料を取り出す。
女性客 :どうぞ。
男性客 :(吃驚)え!これが同じ人!?
女性客 :そうですよ。
男性客 :全然別人じゃないですか。すごいもんだ、最近の技術は。
女性客 :最近はコストも安くなり、希望者が急増してるんです。
男性客 :すごい変わりようだな、この写真の人なんか知合いもきっ
と判らないだろ。見てよ、マスター。
マスター :これほど生き生きしてるのは、やっぱり自分のコンプレッ
クスを克服したからでしょうか。
女性客 :そうです。それとそうなると周囲の自分に対しての対応が
驚くほどかわったと、特に男性からの・・・
男性客 :わかるなあ、やっぱり男ってかわいい子には弱いから。
職場でも知らないうちについついえこひいきしてるよなあ。
女性客 :それで人生がよい方に変わるなら、整形手術は有効なもの
だと思うんです。だからコンプレックスで悩んでいる女性
に、勇気と正しい知識がつくような本にできたらいいと思っ
てます。
男性客 :なるほど。美への先導者か。
(PLAY4)
男性客 :でもきれいな人でも、性格の悪い人っていますよね。
女性客 :はい。そういう人は子供の頃からかわいいと言われて、ち
やほや育ったからだと思います。要はわがままで、他人の
痛みや傷がわからない人。
男性客 :なるほど。
女性客 :逆にきれいな人で優しい人は、心に余裕があるんですね。
他人が親切にしてくれるから、私も優しくしてあげようと。
男性客 :本間さんがそうですよね、美人で優しい。
女性客 :いえ、私なんか全然ダメです。そう心がけはしてますけど、
その時の気分で相手に思いやりの気持ちが欠ける時があり
ます。
男性客 :性格形成にやっぱり外見は関係あるんですね。
女性客 :それだけとは言えませんが、影響はあると思います。
なっちゃんも、顔のアザがなければもっと積極的な性格の
子になっていたでしょう。
男性客 :そうだなあ。でもなっちゃんは性格は悪くなかった。言え
ば優しい子だった。
女性客 :(ちょっと驚いて)そうなんですか?
男性客 :本間さんも知ってるでしょ。
女性客 :え、ええ。
男性客 :小学校の周りにノラ犬がいて、いつも給食をわざと残して
犬にやっていたり。一人教室の花に水をやってたりして。
女性客 :そんなこと知ってたのですか。
男性客 :うん。だからさっき言ったように、みんながイジメるのに
ついていただけだから。本当はかわいそうに思ってた。
助けてあげたかったけど勇気がなかったんだ・・・
どうかしました、本間さん?
女性客 :いいえ。マスター、おかわり貰えますか。
(PLAY5)
S E ドリンクをつぐ音
マスター :おまたせしました。
女性客 :ありがとう。なっちゃんよく言ってました。
男性客 :なんて?
女性客 :小学校の時、よく顔のことでイジメられたけど、好きな人
にイジメられたのが一番悲しかったって。
男性客 :まさか俺のことじゃないでしょ。
女性客 :それは判りませんが、イジメた方は時がたてば忘れてしま
う事でも、イジメられた方は案外覚えているものですから。
男性客 :言訳じゃないけど、彼女をイジメた事は妙に記憶に残って
随分反省したんだ。自分の勇気のなさを。だからもし、こ
れからなっちゃんに会うことが偶然にもあったら、当時の
事を謝ろうって思ってる。
女性客 :・・・
男性客 :なんかなっちゃんの話ばかりになりましたね。
女性客 :いいじゃないですか。今のこと私もなっちゃんに会えば、
伝えておきます。きっと喜びますよ。
男性客 :そうしてください。案外本間さんの書く本をなっちゃんが
読んで、整形を考えたりして。
女性客 :そうですね。
男性客 :待てよ、もうしてるかも・・・俺なんか会っても判らない
ほどの美人に。
女性客 :そうですね・・・。
男性客 :本間さん・・・
女性客 :はい。
男性客 :1つだけ聞いてもいいですか?
女性客 :なんでしょう?
男性客 :(聞きにくそうに)うーん・・・やっぱりいいですよ。
女性客 :私が整形をしたのかってでしょう。
(PLAY6)
男性客 :そうです。やっぱりそういうの聞くことって失礼ですか?
女性客 :人にもよると思いますけど。わたしは・・・やっぱり内緒
にしておきます。
男性客 :(残念そうに)そうですか。
女性客 :あ、もうこんな時間。仕事の電話が入りますのでそろそろ
失礼します。本当に今日はご協力ありがとうございました。
男性客 :送りましょう。
女性客 :大丈夫です。それともし聞き漏れた事思い出したら電話し
てもいいですか?
男性客 :ええ、でもうちの部署には秋山は二人いますから・・・
女性客 :秋山努さんと言えばいいですね。
男性客 :(驚いたように)あ、ああ・・・
女性客 :それではここで。マスター、ごちそうさまでした。
マスター :ありがとうございました。
S E ドアの開閉の音
マスター :お送りしなくてよろしかったのですか?
男性客 :・・・
マスター :どうかされましたか?
男性客 :彼女、俺の名前を知っていた・・・
マスター :お名刺を渡したのでは?
男性客 :うん。渡したけど、それは秋山努という名前じゃない。
マスター :違うのですか?
男性客 :努は23歳まで使っていたけど、姓名判断でかえる方がいい
と言われたのでかえたんだ。
マスター :それじゃ・・・
男性客 :努という名前を知ってるのは学生までの友人・・・
マスター :彼女は・・・
男性客 :どう思います、マスターは。
マスター :お話しの中の、女性?
男性客 :でも本間百合と・・・
マスター :執筆される方はペンネームをつかわれます。
男性客 :じゃなんで俺に会いに来たんだろう?
マスター :(ちょっと間をおいて)それは、確かめたかったからでは
ないでしょうか?
男性客 :なにを?
マスター :小さい頃イジメを受けて、自分が好きだった人が本当に悪
意を持ってしたことなのか?
男性客 :そうか・・・
マスター :でも、答えを見つけて彼女、嬉しそうに帰って行きましたね。
おわり
訪ねてきた女
Story by ushi
関連記事
- スマートな泣き方
- ハンターバニッシュ
- シンデレラロード・第1話
- シンデレラロード・第2話
- シンデレラロード・第3話
- ナナ
- 父の日記
- 格子のある部屋
- 慣れない部屋
- 霧が晴れるまで
- ワインレッドのウインク
- Ten Years After
- グラデュエーション(卒業)
- 残り香の記憶(後編)
- 残り香の記憶(前編)
- ファールボールの幸運
- 来なかった待ち人
- 単身赴任
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 訪ねてきた女
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://ushibook.com/mt/mt-tb.cgi/7


コメントをどうぞ