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訪ねてきた女

one_shot_6.jpg女性雑誌のアンケート取材に応じた男。訪ねて来た編集者はとびきりの美人。取材内容は「女性の整形」。男の過去が次第に紐解かれていくと・・・

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(PLAY1)


         S E ドアの開閉の音


男性客  :どうぞ、入ってください。
マスター :いらっしゃいませ。
女性客    :ほんと、いいお店ですね。
男性客  :マスター、こちら女性ライターの本間百合さん。
マスター :始めまして。
男性客  :まずは飲み物を頼みましょう。何になさります?
女性客    :モスコー・ミュール、お願いします。
男性客   :俺はマンハッタンください。
マスター :かしこまりました。


                  S E ドリンクを作る音


男性客  :(嬉しそうに)マスター、今日さ俺取材されちゃって。生
      まれて始めて、1度されたかったんだ。
マスター :何を取材されましたか?
男性客  :まあ一般的な男の恋愛感から、交遊関係、遊び、趣味とか
      ほら、よく女性雑誌にあるでしょ、男はこう思ってますよ
      っていうアレ。
マスター :お待たせしました。
女性客    :ありがとう。
男性客  :でも、俺みたいに取材される男ってどうやって選ぶの?
女性客    :それはまた別の人が選ぶのでよく知りませんけど、たぶん
      ランダムに選ぶのだと思います。
男性客  :そうか、じゃ俺はラッキーだ。
女性客    :取材させてもらってそんなに喜んでいただくなんて・・・
男性客  :取材もそうだけど、本間さんみたいな美人に知り会えて。
女性客    :あら、そんな・・・
男性客  :ご結婚は?
女性客    :まだです。
男性客  :いよいよラッキーだ。


(PLAY2)


女性客    :さっき学校名もお聞きしましたけど。
男性客  :ええ。
女性客    :北須磨高校だと、夏田圭子さんはご存知ないですか?
男性客  :ああ、彼女なら小学校から一緒でした。本間さんもご存知
      なんですか?
女性客    :大学の時一緒だったんです。
男性客  :そうですか。彼女今何してるんですか?
女性客    :卒業後、私も会ってないんです。
男性客  :そうなんですか?
女性客    :小さい頃の彼女ってどんな子でしたか?
男性客  :そうだな、小さい頃はナッちゃんで通っててよく遊んだり
      したなあ。作文がすごく上手かった。俺なんか何書いたら
      いいのか首かしげてる横で、スラスラ書いてた。
女性客    :そう。
男性客  :でも彼女よくいじめられてた。ほら、小さい頃って、人の
      欠点をあからさまに言うじゃない。
女性客    :そうね。
男性客  :彼女、なんて言うかお世辞にもかわいくなかったんだ、顔
      が。 それと・・・
女性客    :それと?
男性客  :うん・・・顔にアザがあったんだ。知ってるだろ。
女性客    :ええ・・・
男性客  :だから、男の子達にオバケってからかわれて、よく泣かさ
      れてた。今から思えば、子供の頃って残酷だよな。
女性客    :イジメを助けてあげなかったのですか?
男性客  :可哀相に思ったけど、そんな事したら変に思われるかもし
      れないし、逆に俺がイジメられるかもしれないと・・・
      弱虫だったんだ。学年が上がるにつれて、そんな酷いこと
      はなくなったけど、顔のアザの事をやっぱり気にしてたん
      だと思う。みんなから離れて、孤立することが多かった。
      いわゆるクライ感じになってしまった。


(PLAY3)


女性客    :やっぱり男性って女性はきれいな方が好きですよね。
男性客  :そりゃ・・・そうかなやっぱり。
女性客    :私実は今、整形美容をした人についての本書いてるんです。
男性客  :へえ。
女性客    :資料もってるんで、ご意見聞かせてください。


        S E バッグから資料を取り出す。


女性客    :どうぞ。
男性客  :(吃驚)え!これが同じ人!?
女性客    :そうですよ。
男性客  :全然別人じゃないですか。すごいもんだ、最近の技術は。
女性客    :最近はコストも安くなり、希望者が急増してるんです。
男性客  :すごい変わりようだな、この写真の人なんか知合いもきっ
      と判らないだろ。見てよ、マスター。
マスター :これほど生き生きしてるのは、やっぱり自分のコンプレッ
      クスを克服したからでしょうか。
女性客    :そうです。それとそうなると周囲の自分に対しての対応が
      驚くほどかわったと、特に男性からの・・・
男性客  :わかるなあ、やっぱり男ってかわいい子には弱いから。
      職場でも知らないうちについついえこひいきしてるよなあ。
女性客    :それで人生がよい方に変わるなら、整形手術は有効なもの
      だと思うんです。だからコンプレックスで悩んでいる女性
      に、勇気と正しい知識がつくような本にできたらいいと思っ
      てます。
男性客  :なるほど。美への先導者か。


(PLAY4)


男性客  :でもきれいな人でも、性格の悪い人っていますよね。
女性客    :はい。そういう人は子供の頃からかわいいと言われて、ち
      やほや育ったからだと思います。要はわがままで、他人の
      痛みや傷がわからない人。
男性客  :なるほど。
女性客    :逆にきれいな人で優しい人は、心に余裕があるんですね。
      他人が親切にしてくれるから、私も優しくしてあげようと。
男性客  :本間さんがそうですよね、美人で優しい。
女性客    :いえ、私なんか全然ダメです。そう心がけはしてますけど、
            その時の気分で相手に思いやりの気持ちが欠ける時があり
      ます。
男性客  :性格形成にやっぱり外見は関係あるんですね。
女性客    :それだけとは言えませんが、影響はあると思います。
            なっちゃんも、顔のアザがなければもっと積極的な性格の
      子になっていたでしょう。
男性客  :そうだなあ。でもなっちゃんは性格は悪くなかった。言え
      ば優しい子だった。
女性客    :(ちょっと驚いて)そうなんですか?
男性客  :本間さんも知ってるでしょ。
女性客    :え、ええ。
男性客  :小学校の周りにノラ犬がいて、いつも給食をわざと残して
      犬にやっていたり。一人教室の花に水をやってたりして。
女性客    :そんなこと知ってたのですか。
男性客  :うん。だからさっき言ったように、みんながイジメるのに
      ついていただけだから。本当はかわいそうに思ってた。
      助けてあげたかったけど勇気がなかったんだ・・・
            どうかしました、本間さん?
女性客    :いいえ。マスター、おかわり貰えますか。


(PLAY5)


          S E ドリンクをつぐ音


マスター :おまたせしました。
女性客    :ありがとう。なっちゃんよく言ってました。
男性客  :なんて?
女性客    :小学校の時、よく顔のことでイジメられたけど、好きな人
      にイジメられたのが一番悲しかったって。
男性客  :まさか俺のことじゃないでしょ。
女性客    :それは判りませんが、イジメた方は時がたてば忘れてしま
      う事でも、イジメられた方は案外覚えているものですから。
男性客  :言訳じゃないけど、彼女をイジメた事は妙に記憶に残って
      随分反省したんだ。自分の勇気のなさを。だからもし、こ
      れからなっちゃんに会うことが偶然にもあったら、当時の
      事を謝ろうって思ってる。
女性客    :・・・
男性客  :なんかなっちゃんの話ばかりになりましたね。
女性客    :いいじゃないですか。今のこと私もなっちゃんに会えば、
      伝えておきます。きっと喜びますよ。
男性客  :そうしてください。案外本間さんの書く本をなっちゃんが
      読んで、整形を考えたりして。
女性客    :そうですね。
男性客  :待てよ、もうしてるかも・・・俺なんか会っても判らない
      ほどの美人に。
女性客    :そうですね・・・。
男性客  :本間さん・・・
女性客    :はい。
男性客  :1つだけ聞いてもいいですか?
女性客    :なんでしょう?
男性客  :(聞きにくそうに)うーん・・・やっぱりいいですよ。
女性客    :私が整形をしたのかってでしょう。


(PLAY6)


男性客  :そうです。やっぱりそういうの聞くことって失礼ですか?
女性客    :人にもよると思いますけど。わたしは・・・やっぱり内緒
      にしておきます。
男性客  :(残念そうに)そうですか。
女性客    :あ、もうこんな時間。仕事の電話が入りますのでそろそろ
      失礼します。本当に今日はご協力ありがとうございました。
男性客  :送りましょう。
女性客    :大丈夫です。それともし聞き漏れた事思い出したら電話し
      てもいいですか?
男性客  :ええ、でもうちの部署には秋山は二人いますから・・・
女性客    :秋山努さんと言えばいいですね。
男性客  :(驚いたように)あ、ああ・・・
女性客    :それではここで。マスター、ごちそうさまでした。
マスター :ありがとうございました。


         S E ドアの開閉の音


マスター :お送りしなくてよろしかったのですか?
男性客  :・・・
マスター :どうかされましたか?
男性客  :彼女、俺の名前を知っていた・・・
マスター :お名刺を渡したのでは?
男性客  :うん。渡したけど、それは秋山努という名前じゃない。
マスター :違うのですか?
男性客  :努は23歳まで使っていたけど、姓名判断でかえる方がいい
      と言われたのでかえたんだ。
マスター :それじゃ・・・
男性客  :努という名前を知ってるのは学生までの友人・・・
マスター :彼女は・・・
男性客  :どう思います、マスターは。
マスター :お話しの中の、女性?
男性客  :でも本間百合と・・・
マスター :執筆される方はペンネームをつかわれます。
男性客  :じゃなんで俺に会いに来たんだろう?
マスター :(ちょっと間をおいて)それは、確かめたかったからでは
      ないでしょうか?
男性客  :なにを?
マスター :小さい頃イジメを受けて、自分が好きだった人が本当に悪
      意を持ってしたことなのか?
男性客  :そうか・・・
マスター :でも、答えを見つけて彼女、嬉しそうに帰って行きましたね。

 

おわり

 

訪ねてきた女
Story by ushi

タグ : 牛のドラマシアター ドラマ シナリオ 恋愛 ラジオドラマ バールサンドリオン 訪ねてきた女

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