Weekend Hotel
友人のミュージシャンの楽曲からイメージして作りました。
毎週末を一緒だった男が去り、ひとりにしないでと泣く都会の女のワンシーンです。
Music:ひとりにしないで
Lyrics/Music/Arranged by kenshin
バスルームの扉を開いて、素肌の彼女が出てきた。
シャワーを浴びた後バスタオルで湯滴をぬぐったばかりの身体にタオル地の真っ白のガウンだけを身に纏っている。彼女のお気に入りのものだ。
湯上りはこの出で立ちで、冷たいビールを飲みながら身体をクールダウンせるのが彼女のいつものスタイルなのだ。ロングの髪から雫が落ちないように、タオルをターバンのように巻きながらキッチンへと向かう。
一人暮らし用マンションに備え付けの冷蔵庫まで彼女は歩いた。アボォカード色の冷蔵庫のドアを開き、12オンス缶のビールを取り出した。プルリングを左手で引き抜き、乾いた喉に流し込む。胃の淵に落ちていく液体の心地よさをしばらく味わった。
缶ビールを持ったまま、彼女はダイニング続きの隣の部屋まで歩いて入った。1DKの都会の中にある典型的なレディースマンションだ。流行のデザインマンションというだけあって、瀟洒な内装造りが気に入って契約した。
バルコニーへ出る窓には春らしい柄のカーテンが取り付けられている。サッシの重いガラスを開けて、バルコニーへ彼女は出た。ガラスを開けると同時に、都会の騒音が聞こえる。ここは往復6車線の幹線道路のすぐ脇にある。
週末の夜とあってか、車の流れはいつもより少ない。マンションのすぐ下を彼女は見下ろした。いつものBMWがいつもの位置に路上駐車している。その後ろの4駆も毎週末に来る車だった。道路は週末にはいつも来る車たちの駐車場となっている。
その車の若い運転手たちは、このマンションのいずれかの部屋にいるはずだ。都会のオシャレなレディースマンションは、週末になればブティックホテルに様相を変える。そんなことを、つい1ヶ月前までは彼とここから眺めて笑い合ったものだ。
その彼の、ステーションワゴンは今日もない。ないのは当然分かっている。
彼女はサッシガラスを閉めて部屋に入ってきた。空になった缶をキッチンのゴミ箱に入れた。テーブルにはすでに下ごしらえが出来ている料理が並んでいる。量からして二人分はあるだろう。習慣で二人分の分量が身に染みている。
彼女はテーブルに座り、好きなサラダから食べ始めた。この後1週間で一番辛い時間が訪れるのを彼女は知っている。辛い時間を乗り切るための栄養食。
半分も食べないうちに、彼女の瞳からは涙が溢れ出てきた。彼女はその涙を拭おうともしないでサラダを食べた。遠くから音楽と、男女の笑い声が響く。
彼女はフォークを急に置くと、電気を消してベッドに飛び込んだ。ブランケットにくるまって泣いた。身体を丸くして、声をだして泣き続けた。
「ひとりにしないで」そう何度も小さく叫びながら、彼女は果てしなく泣き続けた。
おわり
Weekend Hotel
Story by ushi
Music:ひとりにしないで
Lyrics/Music/Arranged by kenshin
Model mamu
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