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深夜の金木犀から思いを馳せて

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この季節になると毎年、僕の部屋には金木犀(きんもくせい)の香りがたなびいてくる。その香りは静かになんとも言えない郷愁の感があり、物事から雑念を払って心落ち着けてくれる。

今もPCを叩いていると、開けた窓から金木犀の香りが忍び込んできた。その匂いはまさに静かに「心の気を引く」という感じだ。

その香りに誘われるように、僕は手を休めて部屋の中央にゴロリと横になる。しばし癒しの時間かな。そして目を閉じていると、香りというものから次々と連想が湧き起こる。

僕はこういう時間がとても好きだ。そういう時は、次々と湧くイメージを押し殺したりしないで浮かぶに任せて楽しむことにしている。

香りから連想するのは、まずは香水を綺麗に身につけている女性だろう。あまりキツイ香りをプンプン振り撒いている女性は苦手だが、上手にオシャレに身に纏っているいる人はセンスがあり魅力的だと思う。しかし、これがなかなかいないものなんだ。

僕がこれまでに一番上手に香水を身につけていると思った女性に、その香水の名前を聞いたことがある。彼女は石野まこの従姉妹にあたる女性だった。石野まこはかわいいという感じだったが、その従姉妹に当たる人は「美人」という形容が相応しい人だった。

彼女がつけていた香水はシャネルの「クリスタル」というものだった。甘い感じではなく凛とする爽やかな印象を受けたものだ。たぶん誰がつけても良いというものではなく、彼女の付け方が上手かったのだろう。

そして僕の空想は、しばしその女性の面影を追うことになる。

僕は以前「香り」をモチーフにしたドラマを書いたことがある。そのドラマのストーリーは、一人の青年が過去に愛した女性を探し歩くというものだった。青年はわずかな期間一緒に暮らした女性が身につけていた香水の匂いだけを手掛かりに街を彷徨している。

とあるBARで、横に座った女性が探し求めている女と同じ香りをつけていた。青年はその女性に香りの名前を聞く。その香水の名前が「プール・ムッシュ」ということを知る。

青年は困った末に探偵に女の捜索を依頼するが、なにせ手掛かりが偽名のような彼女の名と香水の名前だけということで、半ば探偵もお手上げ状態になるが、思わぬところからその女性の居場所を見つけるという内容。

その探していた女性を見つける「鍵」が、このプール・ムッシュという名前の香水の秘密にあるというのがミソなのだ。ちなみにそのドラマの題名は「残り香の記憶」と言い、某局からオンエアされました。

このドラマの元になった「プール・ムッシュ」という香水は、当時付き合っていた女性から教えられたもの。

そして僕の連想は、当時その香水を教えてくれた女性の面影を追想する。(未練多らしい訳じゃないよ。思い出を楽しんでいるんだよ♪)

僕自身は香りを身につけることは少ない。興味がないというよりも、無頓着なのだろう。時折付けたりもするが、そんな時は往々にして気まぐれです。

つけていると言ってもコロンの類がほとんどで、香水と呼ばれるものはなく、トアレがひとつあるだけ。

そのトアレは以前付き合っていた女性に貰ったものだ。貰って時折つけてみた。確かに香りは気品があり、悪いものではない。が、まだ僕がつけるには年がいってないというか、僕自身風格がないように感じて置いておくだけのものとなっている。

ちなみにそのトアレはディオールから出ている「Fahrenheit」という名前のものです。

もう窓も開け放っていると寒さを感じる頃となったので、僕は開いている窓を閉めた。金木犀の香りもそこで消え、戸棚から「Fahrenheit」を取り出し、箱を開け少し香りを嗅いでみる。

どんな匂いでも不思議と、何か自分が持っているイメージを引き出すものだ。雨で濡れた草木の匂いは、小学校の通学でまだ緑の多ったあの頃に遡る。銭湯独特の湯船の匂いも、友達と遊びながら通った子供の頃に返る。

手に持つ「Fahrenheit」の箱の名前を見ていると、その名前の理由が知りたくなってきた。知りたいと思えば、どうしても知りたい性格なので再びPCの前に座り直し「Fahrenheit」という名前を検索する。

調べてみるに「Fahrenheit」がドイツ語で意味は「華氏」だということを知る。はて、なぜに「Fahrenheit」が「華氏」なのであろう?

まずは、「広辞苑第四版」(岩波書店)の「カ氏」の項を見てみる。「カ氏 (創始者のドイツの物理学者ファーレンハイト(Gabriel Daniel Fahrenheit)の名に中国で華倫海の字を当てたことから)カ氏温度の略。華氏。」

ははん、ファーレンハイトとは人の名前で、華氏という温度体系を作った人なんだ。そして「ファーレンハイト」に中国語の発音で「華倫海」の字を当てたことだったのか。なるほどなるほど。

そして「中日辞典」を引いてみると、「華」の発音は「hua」であることがわかる。つまり「ファーレンハイト」の「ファー」に「華」(hua)の字を当てたのだ。そういうことかい、そういうことかいと深夜一人で合点する。

しかし、なんでこの香りに「ファーレンハイト」(華氏)なる名前がついたものかという疑問がいまだ残る。

とりあえず、香水の説明書なるものを再び検索すると・・・

熱砂と凍土、規範と放埒。支配と服従、一瞬と永劫、饒舌と沈黙。すべての矛盾を巧みに調和させる強く、そして繊細なその香りファーレンハイト。それは「華氏」既存のルールにとらわれず氷点と沸点の間を自由に行き交う現代(いま)を生きる男たちへ

香り・・・さんざし、ハニーサクル、白壇、西洋杉、乳香樹、安息香。乾いた花とエキゾチックな木の香気からなる、類い稀なその香調は、豊かさと清澄さをあわせもつ、バルザミック ウッディフローラル。新しい価値観を模索しはじめた男たちに贈ります

はあ!

しかし判ったようで判らぬ解説が出てきたもんだ・・・

香水も、女性も、物事の意味も不可解な方が趣(おもむき)があって、興が尽きないということかな。

そう思わないと秋の夜長は眠れなくなりそうだ。

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