蛇にピアス

芥川賞を受賞した「蛇にピアス」を読んだ。作者は1984年生まれということで、どんな感性を持ってるのだろうと思ったのが理由だった。

描写はいたるところ痛い箇所だらけだった。なにせアイテムに刺青だのピアスだの、挙句の果てには舌をトカゲのようにスプリットしようとするのだから、痛みに弱い僕にとっては少々キツいところもあった。

でも凡庸とも思える筆のタッチの奥から、主人公が浮き彫りにされる表現はまさに恐れ入った出来栄えだった。作者の経歴を見てみると、なるほどと頷ける。小学校から「面倒臭い」ということで登校拒否をし、まあ言ってみれば落ちこぼれのような学生時代を過ごしていたようだ。

男と同棲し、一時はパチスロで生計を立てようとしたこともあるらしい。金が無くなれば断食みたいなことにもなる。そういう自分の青春を投影させる部分も随所にあるからリアリティを感じさせるのだろう。

不思議なことにこの不良娘の父親は大学教授だそうだ。普通であれば、娘の最悪の素行に烈火のごとく怒るであろうところ、この父親は娘が興味ありそうな本を 数冊「暇があれば読みなさい」と与えたらしい。それが本来から物を書き綴ることが好きな少女の感性に火をつけた。

その登校拒否時代のことを振り返ってこの若き作者は次ぎのようにインタビューに答えている。

「まあ、自分のことを考えると、学校に行かなくて良かったなあと思います。学校向きの子供と不向きな子供がいて、不向きな子供にとっては学校に行かない方が本人のためになる場合も多いと思う。子供が学校に行かないだけで親や教師が騒ぐのはバカバカしい気がします」

淡々と答えるこの元不良娘の言葉は、考えれば至極最もなことなのだ。「書きたいから書く」「行きたくないから行かない」とても自然の理にかなっている。

人間の自然さを追及していけば、常識や概念を超えた「狂気」にいつかは突き当たると僕は思ってる。白昼夢に耽ってる時「こんなこと考えてる私って、おかしいんじゃないかしら」と思うなかれ。それがとても自然なことなんですからね。

僕の周囲には、とてもM女性が多いけど、この「蛇にピアス」という小説はM女性とS男性の関係だから、読めばとてもいい気分になる方もおられるんじゃないかな。とくにゆかちゃんなんかには、お薦めだよ。

最後に、そんなくだりを少し紹介しておきましょう。

シ バさんの言葉に、また涙が伝った。私は短く「イク」と呟き腰をガクガクと震わせた。イッた後、満足に動けないでいるとシバさんはめんどくさそうに私を押し 倒し、上になった。シバさんは深く、強くピストン運動して私の髪をつかんだり、首を絞めたりしてひとしきり私の苦しむ顔を楽しむと「いくよ」と言った。あ のピアッサーを持って言った時と同じだった。短く、抑揚のない声。ぐっと深く入れて、引き抜き、私の口の中に射精した。その終わりは地獄からの開放のよう でも、天国からの追放のようでもあった。シバさんはすぐに寝台から降りて、ティッシュでチンコを拭くとトランクスを穿いた。私は投げられたティッシュの箱 をキャッチし、鏡を見ながら精子を拭き取った。涙でメイクもはげかけていた。。。
(文芸春秋3月号「蛇とピアス」より)




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